歴史の中で生きるクルマ911

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911の前はボクスターに乗っていた。

予めオプションが組み込まれた、
いわゆるディーラーストック車を、
ホイールのみ、
近隣エリアの車輛から、
取っ替えひっ替えして、
唯一カスタマイズしたのを覚えている。

」のボクスターだったが、
諸々含め結局1000万に程近かった。
奇しくも初めての新車購入が、
このポルシェとなった。


この時、
そのボクスターが、
987タイプ」であることは、
まだ分かっていなかった。
そういうレベルでポルシェデビューした。


エボ4を降りて数年後、
BMWのE46から、
再びスポーツカー熱が不覚にも再燃。

「スポーツカーはもう降りる」
という決意を胸に、
2ドアのE46を中古で購入したが、
これも早々にイジり倒してしまった。

次こそは、
カイエンなど背の高いクルマで、
優雅に水澄ましのように街を流す、
を理想像としていたが、
自分の「本当の想い」とは、
違っていたことにすぐ気付く。


乗り換えの候補として、
ポルシェのカイエンを筆頭に、
C63やM3なども試乗したが、
本能的に「感動」を覚えたのは、
「ポルシェ」だけだった。

それはしかも、
カイエンではなく、
ボクスターというモデルで、
与えられた「感動」であった。
試乗した瞬間に脳内を荒らされた…


ボクスターは、
随分と多くの感動を与えてくれ、
カーライフを豊かにしてくれた。

ポルシェということ、
新車ということ、
スポーツカーということ、
オープンということ、
クルマ好きにとっては、
極めて「全能なモデル」だった。

走ってみれば速く、
ホテルなどに横付けすればラグジュアリーで、
オープンにすればたちまち人目を集め…

乗り降りがし易く、
取り回しも便利で、
耐候性もあり、
適切な出力特性、
よく効くブレーキ、
何より生来の優れたディメンション。

非の打ちどころなんて畏れ多く、
不満なんて何一つなかった。
しいて挙げれば、
2名乗車時に
キャビンが狭いことぐらいだろうか。
スポーツカーなら気にならない領域である。
それなのに…


「なぜ911に興味が出てしまったのか?」


時にして1年足らずで、
新車のボクスターを、
1万キロにも満たない距離で売却し
20年落ちの993に乗り換えることとなった。


もちろん外的な要因…
「資産としての911の優位性」
911のポルシェ内ヒエラルキー」
「新車としてのリセールの焦り」
これらがなかったとは言えないが、
いずれも決定打ではなかった。

いろいろ考えてみると…

きっと、
たぶん、
というレベルでしか言えないが、
911の語りかけてくる感じ」
に惹き込まれたと思っている。
(いや、ただただルックスに惚れ込んだだけの気もする…)

「多くを語ってきて」
「多くを問いかけてきて」
「多くを求めてくる」
所有者やドライバーに、
「要求」をしてくるクルマ、
それが911ではないだろうか。

歴史的にも構造的にも、
決して「全能」ではないところ、
それ故に、
いまだにドライバーに対して、
委ねられてる部分が多い911。
「そこ」に惹かれてしまったかもしれない。

目に見えている全てではなくて、
無理は承知と分かっている中で、、
目に見えない全てを受け入れてみたくて、
その全てを理解してみたくて、
911に憧れたのかもしれない。
(到底ゴール出来ないゲームを買うかのように)


半世紀に渡って先人たちが、
口を揃えて言った、
「911は良い」
という言葉を、
どうしても、
自分で確かてみたくて…

エンジンに火を入れて、
タイヤが転がり始めると、
ヒジをつきながら、
遠くを薄目で見つつ、
我が青銀ポル993が、
911の半世紀に渡る歴史を、
ゆっくりと語りかけてくるような気がする。
(いや、やっぱり見た目にヤられただけもしれない)