「赤い彗星」991後期

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関東某ディーラーに当日電話をして、
当日快く乗せて頂いた、
初見にも関わらず厚遇を頂き感謝。

青銀ポル修理中につきはからずも、
ポロでの仮面試乗という形となった。
デニムにパーカーという軽装で行ったのだが、
さすがにアルパインスターズのレーシングシューズを見られ、
「あの…もしかして…」ということで、
すぐに性はバレる。

もちろん試乗車はPDK想定だったが、
「ポルシェに乗る時は」という、
自分自身の中での最低限の「正装」のつもりで…

平日の昼過ぎということで、
下道~高速道路を小一時間ほど走らせてもらい、
可能な限りアクセルペダルを踏み付けてきたので、
長くはなるが、
時系列でインプレッションをお届けしたい。


試乗車のモデルはC2。

カラーは無償カラーのガーズレッド、
まさに「真っ赤なポルシェ」、
予期せぬ「赤い彗星」を拝命し、
「速く走る」運命を課されることとなった、
仕方がない。

もちろん試乗車はマジョリティーPDK仕様。

試乗車にいるかどうかナゾな金ピカPCCBを驕り、
ホイールはカレラSタイプを携行し、
前245、後305の各20インチ砲で武装。
既に先代GT3のサイズを凌駕しているではないか…

ちなみに後期型C2の標準サイズは、
前235、後295のインチで、
先代997GT3は前235、後ろ305の19インチ。

試乗車に定番の「かなり背伸びしたバージョン」であるが、
残念なことにスポエグを装備していないではないか、
故に991後期のエンジンサウンドは純正音でのインプレとなる。
MT仕様だとでスポエグがチョイスNGなのは考えもの、
アクラボビッチでも買えと言いたいのだろうか(笑)


乗り出す前の全景と印象は、
空冷993と比べればもちろんだが、
先代997と比べてもかなり「大きいな」という感じ、
もう少し言えば「ファット」なイメージだ。
視覚的に「安心感」を強く訴えかけられた。
(見た目はさして991前期と変わらない)

しかしながら、
一旦乗り込んでしまえば、
乗る前に感じたような大きさを感じることはなく、
左右のミラーをドアトリムのスイッチでヒョイと合わせれば、
なんてことはなく「いつものあの911」になるのである。
恐ろし、
このパターンオーダースーツのような着心地。
歴代911オーナーはこの「知ってる感じ」、
にモデルチェンジの度にヤられるのだろう。


試乗車はオプションのエントリーシステムが配備され、
キーをシリンダーに投げ込まなくても、
車内に持ち込んだだけで、
イグニッションオンが出来る近代的な仕様となっていた。
なんかメルセデスのような気がして軽く萎えたのは自分だけか。
ちなみにサイドブレーキもボタンで電化されている。

走行距離800キロの新型はクランキングこそ派手に演出し、
コクピットをいい具合に揺らしながら火が入る。
排気音は噂通りで良く言えばジェントルで、
991前期のカレラSのような獰猛な息遣いは聞こえてこない。
多分スポエグ仕様で前期カレラSと同じ位になるのかと。
個人的には全然足りない。
先代のクアトロポルテのような始動時の感動が欲しい。
(距離800キロで全開にするとはもったいない…)


そう、
申し遅れたが試乗車はなんとRHD。
もはや日本のポルシェのデリバリーは基本右となり、
左はいわゆるオプション扱いという位置づけになるとのこと。
これもスポエグに続きおかしな話だ。

ペダルは先入観も多分にあるが、
やや「左方向へ」オフセットが発生している気がする、
MTの場合ヒールアンドトゥをすると気になるだろう。


シフトは先代パナメーラから続く、
なだらかスロープ仕様の中腹にそびえ立つ。
手をヒョイと伸ばして5速に投げ込む空冷や、
先代の997から比べると随分と、
シフトのポジションが高くなり、
ドライバー寄りになった気がするが、
如何せん「ちょっとバスっぽくないか?」が個人的な印象。
御多分に漏れず操作性はバツグンだが、
昔と比べると随分ステアリングに近くなりましたね、
ということである。
昔のGTのシーケンシャルシフトみたいな位置。
ポジ周りはこんなとこだろうか。

ステアリングはかなりアシストが効いており、
空冷のかつ社外小径ハンドルからすると、
文明の進化をヒシヒシと感じさせる軽快さである。
女性が舵を取ってもまったく心配ないだろう。
どうやらオプションのGTスポーツステアらしく、
3スポーク部分が大胆にエグリ取られていて、
近未来を感じさせる前衛的なデザインだ。
右下にはエンジンモードを4段階に任意で選べる、
ロータリースイッチを伴っている。
(ステア後方はレバー類が数本混在していて混雑気味…)


長くなったが、
やっと出庫である。

車庫から車道にはなだらかな鉄板が敷かれていたが、
余計にソロリと下を擦らないように踊り出てみた。
ノーマルモードの脚は想像以上に柔らかく、
スタンドやコンビニの段差も懐深くこなしてくれそうだ。
ちなみに991後期から全社PASM標準装備となっている。
PSMの次はPASMが標準…

街中の走り出しの印象は、
「一体感」と「軽快感」が強いということ。
増した動力性能から来るものではなく、
いわゆるボディメイクがもたらす賜物なのだろう。
クルマの流れに入ってしまえばその肢体は随分小さく感じる。
(相変わらずウィンカーレバーがちゃちぃのは気になった…)

20分程街中を50キロ以下で流した感じでは、
ゴツゴツ感もなく、
スポーツカーとしては並程度の硬さ。
足回りの許容範囲の深さと、
ただただボディが堅牢であることがすぐに分かった。
(多分ボディも足も800キロではアタリは付いていないはず)


さぁ、
いざ平日の有料道路へ。

と駆け上がる前に、
ほぼクランクの左コーナーが迫ってくるではないか、
「そういえば…金ピカ履いてたな…」
ルームミラーで後方のスペースを確認した直後、
ステアリングを真っすぐでブレーキペダルを一気に踏み付けると、
後ろにパラシュートが開いたかのような減速モードを披露。
想像以上の減速Gにややカラダがついていかない(笑)
MTだったら変速が追い付かない減速の速さ…
(これがもしかしたらMTが標準じゃなくなる理由か?)

予定速度より減速してしまったが、
左コーナーにセオリー通り進入して、
溜めからアクセルペダルを今度は踏み込む。
「本日初めてのアクセル開度50%」である。

「ハヤイッ!…かも!いや、確実に速い!」

怒涛の速さという表現より、
レイザービームのようなスマートな速さ?
NAではなくターボゆえか想像より多少速い加速感覚に襲われる。
という感じだろうか?
500馬力の997後期ターボで味わったような、
脳ミソが蹴散らさせるような加速感とは随分異なる質感。
試乗車は370馬力。

ちなみにアクセル開度20%以下の街乗りだと、
基本的にタービンは稼働せずNA状態での走りとなる。
開度30%以上になるとタービンが過給し始め、
窓を閉めていても車内に、、
「シューン」や「ヒュン」という音が聞こえてくる。
間違いなく991後期はターボ車なのだ。
997ターボでは音がしなかったような気がする…)

アクセルをラフに扱えばわかるが、
ターボラグは実際明確にある。
とはいったもののいわゆる、
「ラグが気になる」というレベルではなく、
荒探しをすれば分かるというレベルである。

加速に関しても、
ターボ車を感じさせるような加速感覚ではない。
加速曲線はNA同様の曲線を描いているはずだ。
エボ4の時のターボシステムとは随分と異なる質感、
この20年間の過給機システムの進化は改めて晴らしい。


平日の日中だが、
国家権力の目を盗み、
パイロンスラロームの任を開始する。
もちろんウィンカー使用モードだ(笑)

ステアリング右下のロータリースイッチを2段捻る、
スポーツプラスモードに投げ込むと、
回転計の指針が一気にレッドゾーン寄りに。
これより、
「本日初めてのアクセル開度100%」である。
現在中央車線を走行中。

最新型とは言えRR、
ディメンションは隠しきれず離陸モードで一瞬後傾姿勢になり、
強いレーザービームのような鋭い加速モードに瞬時に移行。
前走車との距離が一気に縮まる、
やはりだが「速い…っ」。
これで標準車のカレラなのか。

右ウィンカーを点滅させ2発目が光る頃に右車線へ舵を切る、
「舵を切る」と言っても「スパっ」という感じだ、
ロールしないではないか、
やるな赤い彗星!

前方がオールクリアなので、
「イカセテイタダキマスフミッパナシ!」

伸びる伸びる伸びるーぅ…
ルームミラーで後方を常に確認しながらの走りだが、
いつもの空冷ポルシェと段違いの速度域で、
既に手汗いっぱいモード(笑)
ただ安定感がハンパではなく、
破綻する前兆や恐怖感がまったく見られない。
秀逸の一言、
常時「ビシっ」としている。
エアロというよりシャーシ性能とみる。

再び中央車線に戻り、
しばらく沸騰したアタマを冷やし、
手汗いっぱいの手をズボンで拭いて、
再び991を追い越し車線へダイブさせる、
今度は「全開加速のまま乱暴にレーンチェンジ!」を敢行。

幅広305スペックと言えど右リアに、
若干の「ズルッと感」を感じつつ車線変更をすると、
さすがに速度域とヨーが先ほどより高いのか、
低姿勢ながらにロールを一瞬起こすが、
本当に一瞬で軽く収束して颯爽と前へ進む。
それにしても安定感がすごい、
すべてをマシンに預けて走る、
これが今日的な911の乗り方なのか。

途中360モデナの横に並び、
軽くシフトダウンして誘ってみたが、
まったくもって相手にしてもらえなかった、
スポエグがなかったからか。

排気音はもちろん回転上昇と共に高まってはいくが、
決して官能的な音ではないと付け加えておきたい。
回ったなりの音という感じだ。
ちなみに風切音などはなかった。


ストリートで分かる範囲は試させて頂いたので、
高速を降りたあとは静かに流れに身を任せ、
無事基地に帰投。


991後期とのファーストコンタクトに感謝である。

賛否、
いやほとんど賛成しかないと思うが、
所感としては、
加速感だけはまだC63に軍配だが、
その後の安定感や旋回性能は明らかに991に分がある。
カレラSだと加速性能もC63を凌駕すると思われる。

メルセデスだとAMG、
アウディだとRS
BMWだとMからの試乗が多いらしいが、
ポルシェ911の「生っぽさ」は、
いずれのメーカーも敵わないだろう。
試乗したらほぼその心を打ち抜かれるハズだ。


ちなみに9割近くがPDKでの発注で、
MTは1割程度しかオーダーがないとのこと。
寂しい限り。

人気色は、
標準色のシロとクロ、
メタなしも多いらしい。
何とも標準車カレラらしいトレンド。

マイアミブルーなんて、
リビエラブルーみたいに流行りそうな予感がするが、
標準車に塗りたくる人はきっと少ないのだろう。


とは言ったものの、
空冷993を売却して、
991後期最新型に乗り換えたいと聞かれると、
答えはノーなのである。

なんだろうか、
随分と速度域が高くならないと、
最近の911はクルマとシンクロした感覚が、
得られにくいというのは印象的である。

空冷はタイヤの転がり始めから、
クルマの動きや路面のニュアンスが感じられ、
常に楽しい、
991後期は100キロ辺りから面白くなる雰囲気だが、
もはや速度域が一般的にはかなり危険モードの域である。
いわゆる富士などに持っていったら楽しい、
のは間違いなさそうだ。
繰り返しだが試乗車は305タイヤである。


クルマを御す、
というオモシロさに関しては、
やはり997世代、
さらには996世代の方が強く、
空冷ポルシェには到底敵わない。

ニュルのタイムを詰めていくことは絶対条件でもあるが、
ポルシェだから、
ポルシェだからこそ、
「タイムとは違ったベクトル」を、
プロダクトとして何らかの形で、
世の中にデリバリーして欲しいものだ。

マツダのロードスターのように。


ポルシェに初めて乗った人なら、
991後期モデルのあまりの出来の晴らしさに、
速攻で発注書にサインしてしまうだろう。

極論、
1300万というプライスタグで、
速さや質感や所有感をトータルして、
高いのか安いのかと聞かれれば、
まだ「安い」と思えるような、
プロダクトの完成度を誇っていると確信する。

さすがに1500万~とされると、
やや気後れするしそうという具合だ。
いずれもオプションなしのの価格前提の話だ。