TIPに見るPDKの幻影

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久し振りに993TIPに乗ってみたら、
すごく好感触で、
いくつか新しいことが発見出来た。


以前、
964TIPRHDに乗った際には、
そのブレーキペダルのオフセット具合に、
非常に驚いたことを覚えている。

右前方のタイヤハウスを避けるため、
ブレーキが有り得ない程中央へ、
左側にオフセットされており、
カラダを少しヨジらないと、
ブレーキペダルに足を落とせなかった。
(その他、コンディションも悪い個体だった…)

今回は993TIPLHDなので、
その心配は皆無、
セレクターレバーをDに投げ込んで、
スルスルと発進。
(思わず左足をゆっくり動かしてしまう…)
993TIPRHDも同じようなオフセットなのだろうか?)


走り出してすぐ感じるのは、
各部良くメンテされている印象で、
とりわけKONIの足回りのフィーリングがよく、
走り出してすぐにも関わらず、
ドライバーに自信を持たせるインフォメーション。

緩やかな連続する下りコーナーを、
フロントを軸に、
比較的柔らかい印象のミシュランと相まって、
グイグイと路面を掴んでいく。
ミシュランは国産系のハイグリップラジアルより、
初期動作からフレンドリーさを感じさせる。
(本当はもっと片側に荷重を掛けたいが、少しづつ…)


不思議なことに?
いつもより?
ちょっとだけ心穏やかに、
かつコーナーの路面の様子まで、
しっかりくっきり見えるのはナゼだろうか?
本当に気のせいのような少しのレベルだが…

コーナーを2-3超えて、
気持ちよく走っていく中で、
その不思議な感覚の要因が少しづつ分かってくる…

「シフトアップダウンの操作がないこと」

TIPなので、
シフトダウンとアップの操作がなく、
足のクラッチ操作、
手のシフト操作、
目のタコーメータの目視、
に脳ミソの働きを割く必要がないこと、
これがいつも以上に「余裕」を与えていた。
発見だ。


改めて思ったのは、
TIPはもちろん今のPDKほど俊敏ではないが、
964の時代、
1980年後半によくこれだけ、
スパスパと安定して、
かつ壊れない変速機構を作れたな、
と感心させられる。
(当時既にレーシングカーにはPDK機構を搭載済…)

MTで走っている時は、
エンジン回転数のアジャストを適宜任意で行え、
それに呼応したエキゾーストノートの演出などは、
いわゆる「やってる感」は強く、
自分のドライブにある種陶酔出来るが、
実際のところは、
このTIPの自動変速による走行でも、
そこそこ良いペースで走れていると思う。
これも発見だ。
(むしろTIPの方がよっぽどスムーズな疑惑もあるかもしれない)

そう考えると、
このTIPを進化させた、
今や新車のほぼ9割を占めるPDKが、
スタンダードとなったのも納得せざるを得ない。


ただ1つ気になったのは、
993の比較において、
MT車と、
TIP車で明らかに異なる、
ブレーキのフィーリングだろうか。

TIPはペダル剛性感がMTよりも堅く、
かつペダルストロークがMTより短く、
一方で効きのコントロール幅が狭い。

エンジンブレーキが効かないTIP故に、
ペダルストロークを予め短くして、
ブレーキを早急に効かせるべくの、
MTとTIPの思想設計の違いが背景にあると言うが…

よくよく考えると、
ちょっと逆のような気もして、
エンブレのないTIPのブレーキングは、
MTより、
よりコントローラブルである必要があるのではないだろうか?


空冷中古車市場は、
MT絶対主義のような風潮も感じるが、
むしろ水冷PDK出身であれば、
TIPを積極的にチョイスした方が、
満足感が高かったりすると思う。


また空冷ポルシェの奥深さに触れてしまった。