現代車ストリート限界説

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昔のポルシェが、
今になって愛されるという話。



ここ数年の空冷ポルシェブームには、
いくつかワケがあったと思っている。

1つは、
空冷ポルシェの持つ性能や姿が、
この水冷ポルシェ20年の歴史から、
やはり、
もはや、
二度と出て来ない唯一無二である、
ということに、
市場やカスタマーが、
ようやく気付き始めたこと。

1つは、
空冷ポルシェが投機対象として、
しっかりと機能したこと。

1つは、
近年のポルシェも含む、
各メーカーが放つニューモデルに、
カスタマーが食傷気味というか、
愉しさを存分に感じにくくなってきたこと。



今回はこの3つ目の話。



最新のポルシェで言えば、
カレラも400馬力を超え、
もはやエントリーモデルで、
既にスーパーカーな領域に突入。

車重1トン~2トンで、
タイヤが4本の中、
2駆であれば、
その1輪に2~300馬力以上の、
馬力が背負わされることとなる。


まずは、
この状態でタイヤが最適な仕事が、
機能として出来るのかどうか
という話。

そして、
それを素人ドライバーが、
余すことなくパフォーマンスを、
発揮出来るのかどうか、
という話。


いずれも大概は難しい、
であろう。



天候、対向車、歩行者、
路面のアンジュレーション…
様々な状況の中、
限りなくリスクを減らして、
愉しむハードルを下げるのであれば、
馬力は低い方が基本的には、
操り易いというのが相場となっている。

多くの人が感じていると思うが、
メーカー間のパワーウォーズは、
カスタマーの環境やニーズから、
徐々に距離が開き始めている。


クローズドのサーキット
しかも鈴鹿や富士のような、
いわゆるロングコースであれば、
最新991のようなクルマも、
その能力を開放出来るだろうが、
なかなかそうもいかないのが現状。

そう、
今時の高性能なクルマ達は、
もはや、
「乗り手を選ぶクルマ」ではなく、
いまや、
「乗る場所を選ぶクルマ」の領域に達している。

少し前までの、
電子制御がなかった時代は、
「乗り手を選ぶクルマ」が多々存在したが、
今やその次元は過去となり、
もはや次の次元に突入しているのだ。


一部のブルジョワジーな、
サーキットに毎月足繁く通う層には、
「乗る場所を選ぶクルマ」は好適と言えるが、
それはほんの数パーセントの層に過ぎず、
その他ほとんどのユーザーはこれを享受出来ない。

クルマを操る「愉しい!」は、
ドコから生まれるかというと、
「使い切れる」や、
「踏み抜ける」という、
クルマやタイヤが持っている、
本来の性能を、
限りなく100%近く引き出せた状態に、
ドライバーが感じられるのではないだろうか。

その大半をストリートや街中、
峠などで楽しむ層にとっては、
この「愉しい!」に近づける条件としては、
「適度な出力特性」
というのが大事な要素となってくる。



実は、
空冷ポルシェが、
ここ数年フィーチャーされ、
市場で人気が出てきたのは、
メーカーの高出力トレンドに、
「カスタマーが逆行したから生まれた動き」、
とも考えられる。


空冷モデルの放つ、
2~300馬力前後の出力ゾーンが、
実は多くのカスタマーが望んでいる、
出力特性のゾーンということに、
ポルシェはもちろん気付いているだろう。
(もちろん車重の適正具合も重要な要素)

その空冷ポルシェの姿や形、
空冷というエンジン形式、
資産価値などに加え、
現代のストリートに於ける、
「適正な出力特性」というのが、
何より高評価を、
得ているポイントである。

空冷ポルシェの市場が徐々に枯渇状態になり、
緩やかにマーケットは996に移りつつあるが、
996もまたその適正な出力特性の、
ゾーン内にポジションを持つモデルと言える。

かつ電子制御に満たされ切った、
「操られてる感」が強いクルマより、
「自分で操ってる感」が強いクルマが、
今となって人気を博している。

空冷ポルシェだけでなく、
ハチロクロードスターに、
ひとたび乗ると、
「楽しい楽しい」と喜ぶのは、
そういうことである。